前回「美形男子キャラの典型が3つはないとマンネリ化が避けれられない」というお話しをさせていただきました。今回は「バリエーションを増やすにはどうすれば良いか」についてお話しさせて頂きます。

 

 その前に、そもそも「美形男子を描くと女子になってしまう」という、バリエーション以前の問題からお話ししたいと思います。

 この問題に直面している方はたいてい、大好きな作家さんの真似からスタートし、手先の器用さから、かなりの周辺テク(全体の雰囲気だけをカッコよく見せるためだけのテクニック)を先に身につけてしまい、その後に美術の基礎を学ばないまま来てしまった、、、という方かと思われます。

 

 作家さんのキャラクターはすでに現実の人間の姿をかなりデフォルメしています。あどけない少女の顔なのにハリウッド女優ばりのグラマラスボディだったり、男装の麗人(つまり本当は女性)を表現するために限界ギリギリまで腰のくびれを低めに設定したり、といった、作家の作り上げた、種も仕掛けもあるイリュージョン、マジックです。

 デフォルメをたくさん真似したところでデフォルメからは抜けらないのはもちろん、何をどうデフォルメしているのかも分からないままになってしまい、作り手=見る人にマジックを見せなければいけない側が、だれかのマジックにハマりっぱなし、という状態に陥ってしまいます。

 男性と女性の描き分けは、美術解剖学を勉強するしかありません。逆に言うと、勉強さえすれば天賦の才能は一切関係なしに区別ができるようになります。区別ができるということはコントロールが可能になる、ということで、例えばこんなことができるようになります。

「アントワネット王妃とダンスをする礼装のオスカルは美男子なので、肩幅広く腰低めにする。

フェルゼンとダンスをするオダリスク風ドレス姿のオスカルは美女なので、肩幅狭く腰高めにする。」

 

今、あえて胸とお尻の話はいたしませんでした。胸の有無やお尻の大きさは肉付けの部分ですので、ある意味関係ありません。お相撲さんは巨乳ですが、女性の体型ではございませんでしょう?

 

問題は肉ではなく、骨。骨格の有り様、この一言に尽きます。

 

男女はもちろん、大人と子供、老人、それぞれ微妙に骨格が異なります。個人差ももちろんありますが、キャラクターを作る上で欠かせないのは相対的な「らしさ」の勉強です。どのようにすれば相対的に男性「らしく」なるのか、どこをどうすれば女性「らしく」なるのか。男性の骨格のままで胸を膨らましてもドラッグクイーンにしか見えません。

ドラッグクイーン以上に巷で散見されるのはヘソ下の長い男性像です。
これは制作の対象として女性しか見るチャンスがなかった作り手に非常によくあるガッカリケースなのですが、男性は臍から恥骨結合までの距離が女性と比較して相対的に短いです。
骨盤のつき方の角度、子宮の有無など諸条件が重なった結果なのですが、男性をしっかり制作対象として観察すれば必ず分かるし、表現できるはずです。それなのに、「あ、これも。あ、これも。」といった具合で、本当に「子宮があると思しき男性」が後を絶ちません。

 

(美術解剖学も達人クラスになりますと、「片足を上げているのにこんな筋肉の起伏がこんなところに発生するはずがない」といった、いやらしいツッコミを入れるような作品観察ができるようになり、私も目下これを目指して修行中でございます。)

美形男子のキャラバリエーションを増やし、いわゆる「引き出し」の多い作り手になるためには、まず美術の基礎のうちの一つ、美術解剖学をしっかり勉強してください。(続く)

 

 

 

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