残暑お見舞い申し上げます。
8月13日から16日に 大阪中之島の中央公会堂にて、兵庫教育大学教授で彫刻家の前芝武史先生、
美術解剖学モデルの海斗さんと第一回「二人の美術解剖学展」を開催いたしました。
本当に危険なまでの暑さとコロナ禍の中にも関わらず、沢山の方々がお越しくださり、
感激の極みでございます。
今回は様々な点で、画家・彫刻家・モデルの三者がある種の挑戦をいたしました。
限られた光線の中でできるだけ作品が美しく映えるような照明をセッティングしたり、
彫刻作品は360°見れるように配置したり、普段出させていただいている美術館やギャラリーでは
なかなか難しいことを、目一杯させていただきました。
photo by 高田一樹
また、8月14日の記念イベント「激変の瞬間」では、正味1時間で「ブツブツ」と独り言を
言いながら彫塑と木炭デッサンを仕上げるという、ライブペインティングのようなことをいたしました。
もちろんモデルさんはヌードで場に挑みます。(こちらの模様は次回お伝えいたします)
中でも最も挑戦的だったのは「重要文化財である建築の中で展覧会を開催する」という事。
本来は触れることすらままならない重要文化財の室内に、大型の作品を持ち込みます。
備え付けの光源は会議室用のものですので、美術作品に相応しい、温かい色味で十分な光量を得るには、
厳密に規定の範囲を超えない規模の灯体を持ち込まなければなりません。
床や壁を傷つけないように、養生やクッションは欠かせません。
油絵については棒枠の裏の四隅にコルククッションを貼り付け、彫塑作品の下にはパネルカーペットを敷きました。
「中央公会堂」という歴史のある、趣き美しい建物を守ることが、当然ながら展覧会の当事者には求められます。
この経験は私たちアカデミック造形研究プロジェクトにとっても、私個人にとっても非常に大きな糧となりました。
作者や鑑賞者が作品と対話するのと同じく、作品は環境とも対話をしなければ成り立たないということ。
展示をする現場を知らなければ作品の魅力を最大限に引き出すことはできないということ。
私たちの作品は中央公会堂の中で、美しくあっただろうか。
作品自体も、作品の置かれた環境も、お互いに美しさを増幅できただろうか。
展覧会が終わって一息ついた今、そのようなことを考えております。